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ビールの売り場における差別的陳列と小さい男としてのわたし

 発泡酒を買いに行ったのである。るんるん気分の足取りで、とまでは言わないにしても、るんるん気分に限りなく近い気分の足取りで、発泡酒を買いに行ったのである。

 場所は近所のスーパーである。
 いつもどおりに、実にいつもどおりに、今日も発泡酒は冷えていない。冷蔵庫の調子が悪いのか、わたしの調子が悪くて冷えているのを冷えていないように感じているだけなのか、はっきりしたことはわからないけれども、とにかく「冷えていない」。
 どの銘柄の発泡酒に手を触れてみても、どれも冷えていない。これだけたくさん陳列してあるのだから、そのなかの一本ぐらいは冷えていてもよさそうなのに・・・・・・・(わたしは相当な数の発泡酒に手を触れてみたのである)、「どれも冷えていない」。
 それでわたしは、いつもは目を向けないほうの、発泡酒ではなくて本物のビールが陳列してあるほうの冷蔵庫に歩み寄った。涼気がわたしの毛深い耳たぶを打った。なにかをひどく錯覚したときに感じるような軽い眩暈があった。そこは、・・・・・・その冷蔵庫は、・・・・・・・おぉ!・・・・・・・ホッキョクグマがいびきをかいて鼻糞をほじくりながら寝そべっていてもおかしくないぐらいに、冷えているではないか!

 もちろん、倹約の精神を禁酒の精神と共にどぶ川に捨て、本物のビールを買い物かごに放り込んだのであった。そして思った。偽者のビールである発泡酒が、いかに差別的な扱いを受けているのかを。そしてまた、こうも思った。わたしも本物の人間になることができれば、冷えていない冷蔵庫みたいな場所から、冷えている冷蔵庫みたいな場所へと、住処を変えることができるかもしれんな、と。

 本物のビールを手に入れた喜びで、帰りはるんるん気分の足取りであった。
 
 

 

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2009.10.26 | Comments(6) | Trackback(0) | 未分類

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川部賢

Author:川部賢
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