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ゴキブリと夏のブルース

 今年の夏も、我が家では、多くのゴキブリが出た。何匹見たことか? それぞれに名前を付けていたのでは埒があかないので、わたしは彼らに名前を付けなかったのである。
 なぜこういう話をするのかというと、名前を付けることで愛憎というものが増幅するのである。たとえば、ゴキブリを「梅代」と名づけたうえで、
 「梅代、死ね~~~!!!」
 などと叫びながらゴキブリを殺せば、名無しのゴキブリを殺すよりかは、いっそうのこと気持ちがせいせいするのではないか? しかし、どっちにしても、ゴキブリを殺すのはシャチョーの役目だ。わたしには関係ない。
 
 ああ、それにしても、あの恐ろしい格好をしたやつらが、目の隅にちらつくだけで、わたしは身のすくむ思いがする。
 
 恐ろしい!
 心底、恐ろしい!
 来るな!
 来るな~~!!
 滅ぼされる~~!
 ホロボサレル~~!!
 ゴキブリ一匹のために滅ぼされるわけにはいかん!
 逃げよう・・・・
 ソファーの上へ、ランナウェイ・・・・・
 しかし、やつらは、ときに地上を離れ、空を飛ぶ!
 どこへランナウェイしたらよいのか?
 「意外とこの世には逃げ場というものがない」のだと、悟る。
 もっとましなことを悟りたい・・・
 しかし、ともかく今は、ランナウェイ・・・・
 くそうっ! できれば好きな女の子と駆け落ちみたいな感じにランナウェイしてぇ~~。
 しかし、現実は、進むも退くも独り身の、寂しい人生・・・・・

 ゴキブリどもに活力を与えていた夏も、そろそろ終わる。
 今晩は、窓からの風に、秋の冷たさが混じる。

 大好きな夏よ! 大嫌いなゴキブリよ! 共にさらばじゃ!
 

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2008.09.27 | Comments(2) | Trackback(0) | 今日のMASARU

リターン・オブ・メイド ~メイドに下克上された日~

 書道展の飾り付けのバイトだった。書道の額が、35歳のナマった体には重い。重い額を、何度も何度も上げ下げしなくてはならない。枯れた小枝のようなわたしの骨が、ミシミシと音を立てている。そんな幻聴にさいなまれる。たよりない骨。情けない筋肉。ぬめる肌。
 ときどき軽い額に当たると、わたしは誕生日のようにうれしがった。だから、軽い額のことを、自分ルールで勝手に、「誕生日」と呼ぶことにしたのだ。軽い額に当たる度に、わたしは子供のようにうれしがった。
 「へへっ、またまた誕生日だぜ! Yeah!」心のなかで、うれしさのあまり歓喜の叫びをあげる。そんなふうに、誕生日気分を楽しむことで、辛い労働をなんとかやりすごしたのである。

 勤め先の社長はおもしろい人である。昼飯はここにしようと社長が提案した店は、メイドカフェだった。ぞろぞろと、バイトの仲間が店へ入っていく。全員で八名。店内を見渡すと、メイドカフェというのは、そんなに大勢で来る場所ではなさそうである。一人、二人の客ばかりである。
 初めてのメイドカフェ! おお、緊張のあまり、脇に汗がにじみ出てくる! 脇に虫が湧く! 脇から、磯の香とともに、フナムシが踊り出てくる! もう駄目だ、緊張のあまり、ペニスまでもがしょんぼりしている!
 みんなそれぞれに、メイドから「ご主人様」と呼ばれている。おお、クスリなんかしなくとも、ここではこんな風変わりなパノラマが、不思議体験が、約束されている!
 わたしも、メイドに「ご主人様」と呼ばれるのを、犬のようにおとなしく席に座って、待っていた。いまかいまかと、動脈を巡る血も猛々しく、辛抱に辛抱を重ねて、待っていた。いくぶん緊張もほぐれ、ペニスも回復しつつある。
 なのに!
 なんということだ!
 わたしだけが、最初から最後まで、一言たりとも「ご主人様」とは呼んでもらえなかったのだ!
 なぜ! なぜだ! なぜ、わたしは「ご主人様」と呼んでもらえない! カルマのせいなのか! 威厳と貫禄がないためか! 肩で風を切って歩かない、ヘボい歩き方だからなのか! 始終うつむいて、過去のイタい思い出を反芻しているためなのか! なぜなのだぁぁ~~~!
 
 わたしの精神は、昼下がりのメイドカフェで、もう二度と立ち上がれないほどに、叩きのめされたのである。
 威厳と貫禄というものが、わたしにはまったくないのだと、思い知った。自分の性格が、メイドに下克上されるような弱い性格であることを、思い知った。
 わたしは、すっかり勘違いしていた。わたしはここでは「ご主人様」なのだと。しかし、本当のことを知った。「ご主人様」は実はわたしなんぞではなく、むしろ彼女たちのほうだったのだと。
 幸薄い人相で、わたしは店を出たのであった。

2008.09.03 | Comments(11) | Trackback(0) | 今日のMASARU

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川部賢

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